CATEGORY 小説作品一覧

浦山明俊の小説作品をご紹介します。本屋さんへGo! アマゾンへGo!

  • 2018.11.10

『噺家侍』三遊亭円朝始末記その1

『噺家侍』三遊亭円朝始末記その1 その綱の先には、後ろ手にしばられたままのお紀代がつながれていた。 「はぁう。あう、あう」 お紀代は円朝を見つけて、声にならない声を発した。 円朝はお紀代の目を見た。貧しい長屋暮らし。熱病で失った音と言葉。耳が聞こえないばかりに、母親を犠牲にしてしまった幼い日。それでも懸命に生きようと手折りの千代紙人形をこしらえてきたひとりの娘が、哀しい瞳を円朝に向けている。 円朝 […]

  • 2018.11.10

『夢魔の街』陰陽師石田千尋の事件簿その4

『夢魔の街』陰陽師石田千尋の事件簿その4 鈴木亘が敬礼の右手を掲げたまま、筧に尋ねた。 「大佐。爆弾三十発を、どこに仕かけるかご指示をください」 迷彩服を着た集団は二十人ほどいるだろうか。坊主頭の鈴木亘がひときわ背が高い。 残りは、黒い肌をした少年兵たちばかりだ。 柱に隠れて、その光景を眺めていた小島が小声でささやいた。 「あの少年兵たちは、どこから集められたんだろう」 声をひそめて千尋が答えた。 […]

  • 2018.11.10

『花神の都』陰陽師石田千尋の事件簿その3

『花神の都』陰陽師石田千尋の事件簿その3 千尋の言葉が終わらないうちに、 「生きていたって、生きてい……生きていて良いの?」 尚子の肩が震えだした。 「た、助けて……。助けてぇー。弘美はどこへ行ったの?」 弘美の名を呼ぶ尚子の叫び声に、小島は思わずうつむいた。 「小島君、逃げるな。しっかり見届けるんや。尚子さん、こんにちはっ!」 尚子は、全身で息をしている。 「いったい誰なの……。どうしてここにい […]

  • 2018.11.10

『鬼が哭く』陰陽師石田千尋の事件簿その2

『鬼が哭く』陰陽師石田千尋の事件簿その2 携帯電話からは、先ほどスピーカーから発せられた、だみ声が聞こえてきた。 「こちらドクターヘリ機長の磯村だ。君たちの車は目視で見つけたが、海岸が暗くて、患者の位置が分からない。車を基点として方角と距離はどれくらいだ」 小島の誘導は的確だった。 「自動車を基点に国道128号線の九十九里方面を0時とすると、4時の方角。距離は三百メートル以内です」 中略 驚いたの […]

  • 2018.11.10

『東京百鬼』陰陽師石田千尋の事件簿その1

『東京百鬼』陰陽師石田千尋の事件簿その1 「見えたか……」 千尋は指をゆっくりと降ろした。 「闇はな、やさしく魂を抱いてくれる場所なんや」 蛍よりおぼろげな光だった。よろよろと力弱く天空に昇っていく。 「森であれば、樹木の影の闇が霊魂をいたわり、やがて霊魂は樹木の枝先や梢、樹頂から神上りをしていく。霊たちは闇を求めているものなんや」 千尋は、ヒメヤシの枝を胸の前に握った。 「あの場所は、江戸時代に […]