小説の文章表現を推敲する実際のやり方
前回の【文章ノウハウVol.4】「複合動詞」では、複合動詞を使って、文章を鋭敏にする方法をお伝えしました。おさらいしましょう。
<文例1>
道彦は香織に問いただした。(問う+ただす)
「先週の夜勤のときに君はどこにいたんだ」
香織は道彦に言いよどんだ。(言う+よどむ)
「薬局よ」
また道彦は香織を見つめながら問い詰めた(見る+つめる)(問う+詰める)
「どうして薬局にいたんだ」
「院内処方の薬歴簿に、渡辺さんの症状に適している薬がないか調べていたの」
と香織は道彦に小声で答えた。
このように動詞を複合動詞に書き直し、シーンを限定して描くことができたら、動詞や複合動詞そのものを置き換えてみると、文章には鋭敏さをさらに超えて、感情が表現され、シーンが限定され、詳細さが表現された文章へとブラッシュアップすることができます。
さっそく実践してみましょう。
<文例2>
道彦は香織に尋ねた。(問いただしたから変更)
「先週の夜勤のときに君はどこにいたんだ」
香織は口ごもりながら言った。(言いよどんだから変更)
「薬局よ」
また道彦は香織を見つめて、詰め寄った。(問い詰めたから変更)
「どうして薬局にいたんだ」
「院内処方の薬歴簿に、渡辺さんの症状に適している薬がないか調べていたの」
答える香りの声は、小さく震えていた。(に小声で答えたから変更)
しかし会話体のテンポをよくするために、次の書き方もありです。
<文例3>
道彦は言った。
「先週の夜勤のときに君はどこにいたんだ」
香織は答えた。
「薬局よ」
「どうして薬局にいたんだ」
「院内処方の薬歴簿に、渡辺さんの症状に適していない薬がないか調べていたの」
まとめ
複合動詞で書き直した表現を、ときには思い切って、動詞単体で表現できないかを推敲する。
シンプルな文章表現には、きちんとバックグランドがなければならない。
浦山明俊