「する」は書かないように心がけよう
文章を書くときに心がけているのは安直に「する」と書かないことです。
「する」と書いてしまうと、意味が正しく伝わらないことがあります。
「する」と書いてしまうと、重たくて難しい文章になってしまうことがあります。
簡易だから多用される「する」
例を挙げましょう。
「する」の解決の文例も紹介します。
■開催する → 〇〇を開く
■交付する → 〇〇を渡す
■使用する → 〇〇を使う
■停止する → 〇〇を止める
■併設する → 〇〇を並べる
■確認する → 〇〇を確かめる
■出発する → 〇〇へ出かける/〇〇をあとにする
行為を示す名詞+「する」は、よく使われる表現です。
つい書いてしまいがちな「する」
それだけ書きやすく、表現しやすいと感じているので、つい「名詞」+すると書いてしまいます。
やまと言葉の動詞が存在するときには、そちらを使いましょう。
あっ、ほら。書いてしまいました。
■存在する → ある
ですよね。
やまと言葉の動詞があるときには、そちらを使いましょう。でした。
名詞+するは、官庁、役所などで多く見かける表現です。
「する」が日本語に根付いた理由
これは漢語が公用語だった時代の名残です。
江戸時代には、日本各地の各藩で話す言葉が異なっていた(方言)ので、文書の公用語として漢文が使われていました。
各藩の話し言葉の違いは、現代でいう方言です。
明治維新を迎えて、公用語は標準語にまとめられていくのですが、官庁の文書、役場の文書は、漢文筆記の名残から脱却できずに続いていました。
いや現代でも続いているのです。
短文で「名詞+する」と表現されるなら、誤解は起こりにくいのですが、「名詞+する」が連綿と連なって表現されると、ときには何を言っているのか分からなくなってしまうのです。
並ぶと分かりにくい「する」の文章
「先般の国際的紛争における我が国の対応については、閣僚と担当官庁との協議を行ったうえで、審議委員会を設立し、同審議委員会において、協議会を開催した後に、国会で審議するための報告を行う方針である」
いくつあるでしょうか。
そうです。「名詞+する」の表現です。
■協議を+行い(協議をする)→話し合う。
■審議委員会を設立し → 話し合う場を作る
■協議会を開催した後に → 話し合ったあとで
■国会で審議する → 国会で調べ話し合う
■報告を行う → どうなったかを伝える
書き換えれば、このように表現できます。
「今回、起きた外国とのもめごとを日本としてはどうするか。総理大臣と役人とで話し合ったうえで、もっと詳しく話し合う委員を選んで集めて、そこで話し合ってから、国会で法律を作るためのアナウンスをするつもりです」
お役所表現が現代でも息づいている理由は、
どうにも威厳がない。
分かりにくくても威張った表現を残したい。
言い直したり、書き換えたりする文章能力がない。
私たちは文章のプロです。なかでも作文のプロです。
イメージを具体的に読者に抱いてもらうためには、安易に「名詞+する」と表現してはいけません。
それでもつい書いてしまう「する」
どうしても必要な場面を除き、「名詞+する」の表現は回避するべきです。
あっ、ほら。書いてしまいました。
■回避する→避ける
ですよね。
ただし、「名詞+する」でなければ、どうにも表現できないケースもあります。
■電話する
■料理する
■掃除する
名詞+サ行変格活用のときには、言い換えをするよりも、「名詞+する」は自然に読んでもらえます。
まとめ
「名詞」+する をなるべく使わない。
「名詞」+するは漢語由来なので、やまと言葉に書き直すと日本語として伝わりやすくなる。
表現に威厳をもたせたいときには「名詞」+するを使っても構わない。
「名詞」+サ行変格活用のときには、するを使っても読みやすい表現になり得る。
浦山明俊