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Urayama Akitoshi

【文章ノウハウVol.3】読んだ直後から文章が上達する プロの小説家が伝授する作文術「漢語とやまと言葉」

やまと言葉で表現できないかを考える

あなたの文章は、堅苦しくて分かりにくい、なんて言われていませんか。

「的」「性」「化」などの尾語をやまと言葉に変換するだけでも、あなたの文章は格段に読みやすくなります。

 

「だ」「である」と「です」「ます」では変わらない文章の分かりやすさ

 

よく「だ」「である」が硬い文章で、「です」「ます」が柔かい文章を書くコツだと紹介している記事を見かけますが、実際は漢語を使いすぎている文章が、硬い文章になりやすいのです。

柔らかい文章を書くコツは、漢語をなるべくやまと言葉に変換して書くことなのです。

まずは「的」「性」「化」を使わずに書く方法を見ていきましょう。

 

ここではわかりやすい例を挙げましょう。

「的」「性」「化」を封印する

「的」「性」「化」などは漢語的表現の代表です。

 

<文例1> 日常的にうっかり使いがちである。

<文例2> 必要性を感じない。

<文例3> 執筆作業を効率化したい。

 

文例1を書き直してみましょう。

■ 日常的にうっかり使いがちである。

↓↓↓

日常、うっかり使いがちである。

↓↓↓

ふだん、うっかり使いがちである。

 

どうでしょうか。堅苦しい表現が、ソフトで分かりやすい文章になっていませんか。

 

次に文例2を書き直してみます。

 

■ 必要性を感じない。

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必要を感じない。

↓↓↓

必要だと思わない。

 

「性」の表現を書き直しただけで、上から目線みたいな表現が、読者と同じ目線におりてきたように感じませんか。

 

次に例文3を書き直してみます。

 

■ 執筆作業を効率化したい。

↓↓↓

執筆作業の効率をあげたい。

↓↓↓

執筆作業を効率よくしたい。

↓↓↓

書く作業をてきぱきと進めたい

やまと言葉を使いこなせ

 

さらには、試みとして効率という漢語を書き直して、てきぱきという日本語由来のことばに書き直してみました。この日本語由来の言葉を「やまと言葉」と呼びます。

 

では、やまと言葉にこだわって、「作業」という漢語を書き直してみましょう。

 

「書くことをてきぱきと進めたい」

 

さらに私なら、こう書き直します。

 

「てきぱきと書きたい」

 

レトリックの正体

並べてみましょう。

「執筆作業を効率化したい」

「てきぱきと書きたい」

文章表現(レトリック)が異なるだけで、伝えている内容はまったく同じです。

 

国語の成績が良くて、作文を褒められてきた人は、けっこう漢語だらけの文章を書いてしまい、他人からは「読みにくくて、分かりにくい」と敬遠されてしまう原因になったりします。

 

でも「てきぱきと書きたい」なんて表現ではシンプルすぎて、文章表現をしたという感じがしない、というのであれば、漢語表現をわざと残す執筆術があります。

 

漢語とやまと言葉のバランスを取る

 

それは、

 

「書く作業を効率よくしたい」

かもしれませんし、

 

「執筆をストレスなく進めたい」

かもしれませんし、

 

「執筆という作業を効率よく進めたい」

かもしれません。

 

つまりこれが「推敲」作業のひとつの基準なのです。

 

文章表現を自分の好みにと、あれこれいじくって書き直すのは推敲ではないのです。

推敲とは、漢語とやまと言葉のバランスを整えて、自分の表現にする作業なのです。

硬い文章も、柔らかい文章も、こうして推敲してゆくのです。

 

まとめ

 

硬い文章は「です」「ます」に書き直すのではなく、漢語表現をやまと言葉に書き直すのが正解。

推敲は「漢語」と「やまと言葉」のバランスを考慮して、表現を書き直す。

少しでも読みやすい文章にするには「的」「性」「化」の表現を改める。

推敲とは、自分らしい表現に書き直すことではない。

推敲とは漢語とやまと言葉のバランスを整えることである。

 

 浦山明俊

【文章ノウハウVol.2】読んだ直後から文章が上達する プロの小説家が伝授する作文術「修飾語」

修飾語には法則がある

修飾語をたくさんならべて、一文に書き上げることは多くの人が経験すると思います。

修飾語は、並列で記述されることが多いわけですが、読みやすく、伝わりやすくする法則があります。

それは“修飾語は文字数の多い順に並べる法則”です。

重要度は重要ではない修飾語

 <例文1> 浦山は口ひげを生やした、童顔の、しゃべり出すと止まらない、プロの作家の男である。

これを多くの人は、修飾する内容を意識しないで並列させて書くか、重要度の高い順番に並べて書くかのどちらかで執筆しがちです。

ためしに重要度の高い順番に並べて書いてみましょう。

<例文2> 浦山はプロの作家で、童顔の、しゃべり出すと止まらない、口ひげを生やした男である。

例文2では、プロの作家という重要な修飾語は印象に残りますが、「童顔の」「しゃべり出すと止まらない」「口ひげを生やした」という修飾語は、書き手の印象を並べただけに過ぎません。

つまり情報でありながら、読者の印象には刻まれにくい修飾語となってしまっているのです。

単文にするとかえって読みにくくなる

 私が前回の【文章ノウハウVol.1】でお伝えした。単文で書く執筆術を駆使してみましょぅ。

<例文3>浦山はプロの作家である。浦山は童顔である。浦山はしゃべり出すと止まらない。浦山は口ひげを生やしている。

浦山は(主語)+プロの(修飾語)作家である(述語)。までは読んでもらえたとして、次に続く、浦山は(主語)+童顔である。(述語)に引き続き、浦山は……。浦山は……。

と主語が続く文章は、うるさくて読みにくくなってしまいます。

やはり修飾語を一文の中に挿入した文章にまとめる必要があります。

 

種明かしをしてしまえば、修飾語の並べ方は、重要度で配列するよりも、文字数が多いものを前に置いて書く方が読みやすく、伝わりやすい文章になるのです。

どんな文章にも共通する読みやすさの法則

 <例文4> 浦山はしゃべり出すと止まらない、口ひげを生やした、プロの作家で、童顔の男である。

文字数を数えてみましょう。

浦山は+しゃべり出すと止まらない(12文字)、口ひげを生やした(8文字)プロの作家(5文字)で、童顔の男(4文字)である。

 

単純に文字数で並べ直しただけです。

例文1~3よりも、例文4は、読みやすく、理解しやすい文章になっています。

 

別の文章で確かめてみましょう。

<例文5> スーパーカブは、ホンダ社の、世界一多くの台数が生産されている、昭和33年に誕生したバイクである。

 

<例文6> スーパーカブは、世界一多くの台数が生産されている、昭和33年に誕生した、ホンダ社のバイクである。

 

例文6は“修飾語は文字数の多い順に並べるの法則”で書き直したものです。

 

文章を書くときに、修飾語が並列に筆記されるシーンは少なくありません。

そのときには“修飾語は文字数の多い順に並べるの法則”を意識して、いったん書いた文章であっても、推敲するときに、この法則に従って並べ替えてみてください。

あなたの文章は、読みやすく分かりやすいものになるはずです。

 

まとめ

 

修飾語は、重要度の順番に並べて書かない。

修飾語は、文字数の多いものから順番に並べて書く。

このテクニックを使うと、文章は読みやすく、分かりやすくなる。

 

浦山明俊

【文章ノウハウVol.1】読んだ直後から文章が上達する プロの小説家が伝授する作文術「単文」

わかりやすい文章の基本は、単文

よく「行間のある文章」を書きなさいと言われると思います。

小説などで「行間」を生み出すためには、単文で書くとよいのです。

では単文で書くと、どういう効果が現れるのでしょうか。

そもそも単文とは、どんな文章でしょうか。

みんながうっかりウソのある文章を書いている

 

<例文1>

彼は太くてたくましい手を私の肩に置いて「きれいになったね」と言った。

この例文は文法的にも正しいし、ウソなんかないように思われます。

しかし<例文1>だと、この文章の主人公である女性は、はじめから彼の手が太くてたくましいと知っていたことになります。文章のなかで時間は1秒も動いていません。

<例文2>

「きれいになったね」彼は私の肩に手を置いて言った。太くてたくましい手だった。

<例文2>のように書き直しました。この文章のなかでは、時間軸と空間軸が生じています。

「きれいになったね」とまず声をかけられて、彼女はハッとします。
肩に手を置かれるのはそれと同時か、声をかけられた一瞬の後のはずです。
彼女は視線を動かして、肩におかれた手を見ます。
そこではじめて、太くて、たくましい手だと気がつくはずです。

空間と時間が表現される文章

<例文2>は、時間軸と空間軸が描かれた文章だということになります。

時間軸とは(声をかけられてから、肩に手を置かれるまで)のことです。
空間軸とは(彼女の視線が自分の肩に移動して、太くてたくましい手だと気がつくまでの視線の距離)のことです。

(カギ括弧)の部分は書かれていなくても、読者は自然と、文章の外側にある時間や空間を想像します。これが行間のある文章の書き方です。行間のある文章では、文字としては描かれていない仕草や心理や時間の流れなどを描き出すことができるのです。

では行間のある文章を書くためには、どうしたら良いでしょぅ。

主語と述語をなるべく近づけ、修飾部は、文章の外に独立させる。
それだけで良いのです。

短い文章こそ、読みやすい文章だ

 

<例文3>
フェリーに乗る山内君から泣き声交じりの電話がかかってきたのは真夜中の三時を過ぎていた頃だった。

まず主語と述語を探します。主語はどの言葉だと思いますか。

山内君……×

フェリー……×

主語は「電話」で述語は「かかってきた」です。
同じように「フェリーに」が主語「乗る」が述語「電話が」が主語で「かかってきた」が述語です。
<例文3>を分解して主語と述語をなるべく近づけます。

<例文4>
電話がかかってきた。山内君からだった。泣き声交じりだった。フェリーの上からかけているという。真夜中の三時を過ぎていた頃だった。

<例文4>まで分解したら、文章を整えます。

<例文5>
電話がかかってきた。山内君からだった。泣き声交じりだ。フェリーの上からかけているという。時計を見ると真夜中の三時を過ぎていた。

どうですか。
あなたが筆者だったら<例文3>より<例文5>の方が、続きの文章を書きやすくないですか。

作文が上手い人が陥りやすい文法文章

このように主語と述語だけで成り立つ文章を「単文」と呼びます。

日本語の文章には、この単文と重文と複文の3つのパターンしかありません。

そして多くの「作文が得意」な人は、つい重文や複文を書いてしまうのです。

読みやすく、行間が生じやすい執筆方法は、「主語+述語」の単文で文章をつづる方法なのです。

私も小説を書くときには、基本は「主語+述語」の作文を心がけています。

ぜったいに必要なところ以外では、重文や複文の文章は書きません。

まとめ

文章を書くときには、単文で書く。

単文とは「主語+述語」だけで成り立つ文章である。

単文で描かれた文章には、行間が生じやすい。

行間とは、書かれていない時間軸や空間軸の発現である。

 

浦山明俊