どうしても書けない人にお勧めの練習法その1

誰もが始めやすいのは800文字作文です。

800文字作文はあなどれない

 

書きたい欲求はあるけれど、どうしても書けない。

原稿用紙に向かっても、パソコンに向かっても、スマホ画面を見つめても……書けない。

ならば、書けない自分を、書ける自分に変身させてしまいましょう。

 

誰もが始めやすいのは800文字作文です。

 

お察しの通り800文字で、朝日新聞の一面に掲載されている『天声人語』のようなコラムを書いてみるのです。

 

名文を書こうとして、筆を止める必要はありません。

どうせ誰も読まないのだ、というくらいの気楽さで、しかし本気で書いてみましょう。

 

テーマにも悩む必要はありません。

 

その日に見かけた人物の印象と、どんな人なのかの想像、ときには妄想でもいいのです。

その日に出会った猫のかわいらしさについて800文字を費やすのも悪くありません。

その日の出来事を書いてみるのも、面白いところです。

その日の風景でも構いません。

 

自分のことを書かなければ文章は上達する

 

コツがあります。

 

「私は……」

で書き始めないことです。

 

つまり自分のことは書かない。

これが鉄則です。

 

自分のことは、客観視しにくいのです。

自分のことは、今日でも、明日でも、あさってでも書けます。

 

そして大抵が、自分を書くとつまらない文章に陥ってしまうのです。

 

小学校の作文教育は、自分のことを書くように指導します。

 

これを真に受けて、文筆家や小説家への道は「自分のことを書く」からスタートするのだと誤解している人は少なくありません。

 

読みたくない本の代表は「闘病記」だと思うのは、私だけでしょうか。

 

自分を中心に置いて、書いて構わないのは、売れっ子作家と有名タレントだけです。

 

客観視こそが作家への道

 

800文字作文の効能は、客観の文章を書く稽古になる点です。

 

テーマをおさらいしておきましょう。

 

その日に見かけた人物 → 街ですれ違ったちょっと気になる人への想像。

その日に出会った猫  → どんな模様で、どんな仕草が可愛かったか。

その日の出来事    → パン屋の香りがどうだったか。駅にどんな人たちがいたか。

その日の風景     → 街に見つけた変化。たまたま見上げた月の形。夕景の色、その発見。
思ったこと、感じたこと。

 

800文字作文は、保存しておいて、数ヶ月、ときに数年後に読み返すと、作家としての実力がどう変化して、どう身についていったかを学び直す財産になります。

 

そして、絶対的な注意。
それは800文字以上を書かないことです。

今日は調子が良くて「すらすら書けるぞ」と思っても、800文字を超えてはいけません。
800文字以内に収めて、なおかつ、まとまりのある文章に仕上げることを心がけてください。

 

まとめ

強制的に「書く」ことを日常にとりこむ。

800文字作文は、毎日続けると、書ける自分が見えてくる。

「私は……」で書き始めない。

浦山明俊