こそあど言葉を書き直すと、読みやすい文章になる
そもそも指示代名詞って何だ?
指示代名詞とは「これ」「この」「それ」「その」「あれ」「あの」「どれ」「どの」ことです。
「こそあど言葉」なんて小学校では教えています。
<文例1>「信玄は諏訪の稲作の収穫量が低迷していることに頭を悩ましていた。①それはこれからも続くだろうし、②それらのことは国を治める大名としては当然、何らかの手段を講じなければならない課題だった。③それに応えようとしたのが、武田二十四将のひとり、春日虎綱である」
「それ」だけでもこんなにあります。
そして国語のテストは、こう問うのです。
問一 ①のそれは、何を指す言葉ですか。全文で答えなさい。
問二 ②のそれらとは何のことですか。全文で答えなさい。
問三 ③のそれとは何ですか。二十文字以内で答えなさい。
答え一 諏訪の稲作の収穫量が低迷していること
答え二 稲作の低迷だけではなく、国を治めるときの課題のすべて
答え三 信玄が頭を悩ましている様々なこと。あるいは稲作の収穫量を増やすこと。
作文自慢の人が使いがちな指示代名詞
指示代名詞を安易に使うと、読解力への緊張を強いることになり、読みにくく、そもそもけっこうな集中力を求めなければ、読んでもらえない文章になってしまうのです。
しかし作文が巧いと褒められた経験のある人たちのほとんどが、この指示代名詞を“誇らしげに”使いまくって作文します。
かつての僕もそうでした。いまでは反省しています。
<例文1>は、次のように書き直せるでしょう。
<例文2> 「信玄は諏訪の稲作の収穫量が低迷していることに頭を悩ましていた。収穫量の低迷はこれからも続くだろうし、豊作に導くことはもちろん、国を豊かにすることは大名として手腕を振るわなければならない課題であった。信玄の施政への悩みに応えようとしたのが、武田二十四将のひとり、春日虎綱である」
指示代名詞を使って書くのは、楽です。
指示代名詞を読み解いて、理解するのは苦痛です。
プロの文章書きであるならば、読者に苦痛を強いるのは避けるべきです。
原稿を書き終えたらまずはチェック
まず、原稿をひと通り執筆したら、文章の中の指示代名詞を探しましょう。
そして、例文2のように、指示代名詞を、具体的な名詞へと書き直します。
これを実践するだけでも、あなたの文章は格段に読みやすくなります。
まとめ
指示代名詞は「こそあど言葉」のことである。
「これ」「それ」「あれ」「どれ」のことである。
指示代名詞を使って作文するのは執筆者にとっては楽である。
指示代名詞の多い文章は、読者にとっては集中力を(だから読み飛ばされるか、読まれないかになる)強いられる。
指示代名詞を具体的な名詞に書き直すのは、読みやすい文章に改めるテクニックである。
浦山明俊