春風亭昇太さんの静かなる哲学

春風亭昇太さんの静かなる哲学

おだやかな落語家

春風亭昇太さんは、じつに静かで、小さな声で、話します。

笑点の司会としての春風亭昇太さんしか知らない人には意外かもしれません。

いやいや、寄席の高座で春風亭昇太の落語を聴いたことがあるという人にも意外かもしれません。

ハイテンションで、勢いがあって、明るい口調に、オーバーアクション。

新作落語『悲しみにてやんでぃ』の時代から、寄席の高座(舞台)を狭しと語る、ヤングな噺家。それが春風亭昇太のイメージでしょう。

でもね、素顔の春風亭昇太は、身体をあまり動かしません。
大声でなんか話しません。
テンション、低い方です。

そんな真の姿をみせてくれたことに、僕はかえって感動してしまいました。

何というかな、深く思考する哲学者、それが春風亭昇太です。

寄席通いのツウは、春風亭昇太といえば新作落語とオウム返しに言うでしょう。

たしかに春風亭昇太の新作落語の面白さ、笑いの取り方、破壊力、瞬発力はすごいです。

でも、だからこそ、春風亭昇太の古典落語を聴いてほしいのです。

緻密にねり上げられた古典落語

僕は『蕎麦清』と『へっつい盗人』あたりしか聴いたことがないんですが、この2つの古典落語を聴くだけでも、春風亭昇太が、いかに緻密に、描写力、表現力、話術を駆使している落語家なのかを実感できると思います。

そんな春風亭昇太さんに取材をしたのは、彼が写真マニアで、プライベートでは、城を撮影に行くとの記事を書くためでした。

城跡が好きなんですよねぇ。

それも中世城郭。

つまり森のなかに堀割と柵跡しか残っていない、かつて城があった場所。

お城の痕跡なんか、研究者の目で探索しないと見つけられません。

遺跡を探すような注意力と観察力。そして歴史の知識がないといけない。

ところが、春風亭昇太の城好きという噂はマスコミにも広まって、いつだったかテレビ番組に引っ張り出されていました。

テレビ番組では、彦根城、姫路城、松江城、高知城、弘前城……。
天守閣が現存している城ばかり。

見た目に、分かりやすい城ばかり。
いかにも城っていう見た目。

それを春風亭昇太が、評価、評論する。
好きな城をランクづけする。
さぁ、行楽の季節、お城を観光にでかけましょう。

そんな番組でした。

もっとも中世城郭(城の遺構)なんて、誰もテレビで見たいとは思わないかもしれない。

哲学者の孤独

春風亭昇太の真髄は、探索する哲学者です。
哲学者は、じつに分かりにくい。周囲から理解されにくい。
考えていることが深いからです。

古典落語の息吹と、笑点の司会。

思慮深い哲学者と、ハイテンションな落語家。

隠した素顔と、見せる満面の笑み。

「これから新幹線に乗るんです」

立ち上がった春風亭昇太は、メガネをかけ替えて、途端に、テレビで見せる満面の笑みの落語家に変じていました。

思慮深い哲学者は、やはり孤独なんだと、僕は思ったのでした。

※このコラムは、浦山明俊の主観で書かれた個人録です。客観的事実だけとは限りませんので、そこのところは、よろしくお願いします。

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